皆既日食ツアーへ参加する皆様へ
皆既日食は自然現象の中でも最も壮観でドラマチックなものであると思われます。このようなすばらしい現象を体験するにあたって、失敗や後悔することがないよう万全の準備で当日に望んでください。以下に、皆既(金環)日食のツアーに参加する際に必要となるいくつかの項目について説明します。 |
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日食の観望は専用の日食観察メガネを使用しましょう | |||
皆既日食の場合も、最初は部分日食から始まります。太陽が月に完全に隠されるまでにはかなりの時間があります。その部分食の経過を見るためには、専用の日食観察メガネを使用するようにしましょう。望遠鏡で太陽を直視したり、肉眼でまぶしい太陽をずっと見ているのは危険です。 写真は日食用に開発された日食観察用メガネです。最近では大型のカメラ量販店などでも入手できるようです。この写真はアイソテック株式会社が発売しているものです。 |
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双眼鏡を持参しましょう |
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皆既日食は肉眼で見るだけでもすばらしい現象ですが、双眼鏡を使えばコロナやプロミネンスなどのディテールが良くわかります。倍率は5倍から8倍、口径は20ミリから30ミリくらいが最適で携帯にも便利です。 双眼鏡には8×30などという表示があります。これは前者の数字が倍率、後者は口径を現しています。なお、部分日食の間は絶対に双眼鏡で直接太陽を見ないようにしてください。 |
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ビニールシートを持参しましょう | |||
皆既日食は必ずしも参加者にとって快適な地域で見られるとは限りません。むしろ、厳冬の草原であったり、夏の暑い砂漠の近くであったり過酷な観測を強いられることが多いものです。それでも皆既日食が起こるたびに参加される方がいるのは、それだけ魅力的で、とりつかれるような現象であるためです。観測地がどのような場所であるかは、よくわからない場合も多いものです。また、皆既日食時の太陽の高さも場所によってはかなりの高さになります。立ったまま見ていると首が疲れます。できればビニールシートを持参しましょう。座って眺めると楽に観測できます。また、ビニールシートはいろいろな場面で役に立ちます。 | |||
日焼け止め対策をしましょう | |||
約3時間近く、太陽の方向を見ることになります。特に夏場の皆既日食では平均気温が30度を超えることも珍しくありません。炎天下において紫外線も強いため、特に女性の方は日焼け止め対策が必要となります。また、日射病にならないように注意してください。 | |||
皆既食が終わっても日食はまだ続いています | |||
皆既食が近づくにつれて極度の緊張感に襲われます。この緊張感の高まりには個人差もあるようです。皆既食の状態が終わると再び部分日食となり、太陽は再び明るさを取り戻します。脱力感からか、皆既食が終わると観測をそこで終わりにする方が多いようです。もちろん、どこで終わりにしても個人の自由ですが、中には、部分食の最後まで写真撮影を行っている方もいます。このような観測者の中には、連続写真をとっている場合が多く、ちょっとしたミスでも写真を台無しにしてしまいます。そのような観測者の妨げにならないように、注意しましょう。 また、せっかく遠方の地に出かけて見ているのですから、できれば部分食の最後まで見とどけましょう。 |
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皆既中は太陽ばかりでなく周囲の状況にも注意しましょう | |||
皆既中の間とその前後は太陽ばかりでなく、周りの空の状況や、地上の様子もめまぐるしく変化します。太陽だけに集中するのも良いと思いますが、できれば、それら周囲の様子も観察してください。皆既中の空に見える惑星や明るい恒星、皆既の直前直後のシャドーバンド、そして本影錐の移動の様子などが皆既食に伴って見られます。 | |||
望遠鏡で観測される方へ | |||
●旅行用のトランクへの機材の梱包は慎重に | |||
皆既日食の写真撮影で頭を悩ますのが、機材をいかにして運搬するかということです。機材はできるだけ軽くしたいものですが、写真撮影時のシャッターのぶれの影響も考えて軽量化することにしましょう。 望遠鏡の鏡筒や写真レンズを旅行用のトランクに入れ、荷物として飛行機に預ける場合は、エアーキャップや下着類などで、厳重にパッキングを行い衝撃から守れるようにしましょう。運が悪いと光学系の光軸が狂う場合があります。また、このような形での運搬は、鏡筒にある程度の傷が付くことは覚悟しておいたほうがよいように思います。 レンズセルが鏡筒からはずせるタイプのものは、できればカメラバッグなどに入れて、機内持ち込みとしたほうが安心できるでしょう。 |
2009年1月26日のインドネシアで見られた 金環日食の撮影に使用した機材です。 |
トランクへの梱包の状態です。大切な機材を エアーキャップで保護し、その周りに着替え などを入れて、機材を守ります。 |
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●NDフィルターの入手は早めに | |||
部分日食の段階から撮影に入る方は、ND400あるいはND8といったNDフィルターが必需品となります。日食が迫るにつれて、カメラ店からこれらのフィルターの在庫がなくなるのが常ですので、早めに入手しておかれることをお勧めします。 |
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●できれば事前にテスト撮影を | |||
皆既日食の撮影は海外で行うのがほとんどであるため、案外トラブルがつきものです。当日使用する機材は事前に決めておき、できればその機材で、太陽や月を撮影して、ピントが出るかどうかチェックしておいたほうが安全です。部分食を撮影する方はついでに露出テストも行っておくと良いでしょう。 太陽高度が高い場合は、カメラや望遠鏡の接眼部などが三脚に当たらないかなどもチェックしておきましょう。また2台の望遠鏡を1台の架台に同架して、それぞれにカメラを取り付ける場合は、カメラとカメラがぶつかって干渉しないかどうかもチェックしておきましょう。 |
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●電池は予備も携帯しましょう | |||
望遠鏡やカメラのバッテリーは、少しかさばりますが、できれば予備も持っていくと万一の場合にあわてなくてすみます。特に電子カメラに使用されているバッテリーは日食の観測地となる地域の多くでは入手が困難です。 |
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●機材のチェックは慎重に | |||
日食の撮影には、さまざまな小物が必要になります。くれぐれも忘れ物のないように、出発前の機材のチェックは慎重に行ってください。 |
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●望遠鏡の赤道儀について | |||
天体望遠鏡の架台部となる赤道儀において、ターンバックルを使用するタイプのものは、低緯度で皆既日食を観測する場合は、その地域で使用できるかどうか念のため確認が必要です。このような地域で厳密に赤道儀の極軸合わせ(赤道儀の方向を正確に天の北極に向けることをいいます)を行う場合は、北極星の大気差による浮き上がりを考慮する必要があります。 |
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●事前に撮影計画を立てましょう | |||
撮影する機材が決定したら、出発前に撮影計画を立てることにしましょう。撮影する時刻やシャッタースピード、絞りなどを事前に決定しておき、それに沿って撮影を行うようにします。本番で露出を決定する余裕などはありません。 | |||