皆既継続時間の長い日食とは



  皆既日食の継続時間の理論上の最大の長さは7分31秒とされています。これはアメリカ海軍天文台の天文学者の研究によるものです。日食は地上に落とされた月の影の中に観測地が入ったときに見られますから、この影が大きいほど継続時間の長い日食が見られることになります。このための条件としては、

   1 太陽までの距離が遠いこと(地球から太陽までの距離は季節により微妙に異なります)。
 2 月までの距離が近いこと(すなわち月が地球に近い近地点に位置していること)。
 3 月の影が地上を移動するときの速度が遅いこと。

などです。具体的には、

1 太陽が遠日点近くにある6月末から7月はじめに日食があること。
遠日点とは地球が、その軌道上において太陽から最も遠い地点のことで、太陽が最も小さく見えます。図で描くと地球の軌道は円に見えますが、実際には円に近い楕円であるため、地球から太陽までの距離は、季節により微妙に異なります
2 そのとき、月が近地点に位置していること。
すなわち、月が最も大きく見えていること。
3 日食が天頂付近で起こること。
これは、地球上において、その観測者がいる場所が月に最も近いことを意味します。
4 北緯23度付近で見られること。
6月から7月のはじめは、北緯23度付近で太陽(月)が天頂に来るためです。

などが条件として必要になります。しかし現実には、このような条件が完璧にそろうことはなく、ある研究者によれば、1898年から2510年までの間の日食で皆既継続時間の最も長いものは、2186年7月16日の皆既日食で、その継続時間は7分29秒であるとしています。