AF BORG

カワセミの撮影に使用している主力の機材は、従来から天体写真撮影用に所有している天体望遠鏡BORG125ED(旧製品)とBORG100ED(旧製品)です。これにEOS40Dのボディーをつけて、望遠鏡の直接焦点で撮影するか、1.4倍テレコンバーター(こちらも旧製品、デジタル非対応)を望遠鏡とカメラボディーの間に挿入して使用しています。焦点距離は軽く1000ミリ(35ミリフィルムカメラ換算)を超えるため、シャッターぶれを起こさないように無振動のライブビューモードで撮影します。これにより比較的シャープな画像を得ることができますが、一方でピント合わせに時間がかかり、シャッターチャンスを逃すことがたびたびです。
ネット上を見ると、この天体望遠鏡とAFアダプター、カメラボディーの組み合わせで、AF化に改造できるレポートがいくつか見られるため、その道の諸先輩方の取組みを参考にAF化しました。以下にその手順を紹介します。
BORGをAF化するにはいくつかの方法があるようですが、私が採用したのはペンタックスボディーと、F−AFアダプター(ペンタックス用)を使用する方法です。このアダプターはF値が明るくないと作動しません。そこで、ケンコー製のクローズアップレンズをレデューサ(焦点距離を短くするためのレンズ)代わりに使用します。BORGの純正の0.8倍レデューサ(製造中止品)でも、作動しますが、ピントの合焦率がクローズアップレンズの方が高かったため、こちらを使用しました。
※このレポートを参考にして改造を行う場合は多少のリスクを伴いますので、あくまでも自己責任で行ってください。

 

1 用意したもの
(1) BORG天体望遠鏡(BORG125ED、100ED、どちらも旧製品です。)
(2) F−AFアダプター(ペンタックス用)
 
この製品は従来のマニュアルフォーカスレンズをAF化するためのアダプターで×1.7倍のテレコンバーターの機能が付いています。現在でも販売されているようです。中古を探しましたが見つからなかったため、新品をカメラの量販店で購入しました。
(3) ペンタックスK20Dカメラボディー
 
新宿の中古屋さんで購入しました。定価の半額程度です。
(4) カメラマウントホルダーM(BORGのパーツ)
(5) カメラマウント(ペンタックス用、BORGのパーツ)
(6) サンドペーパー(100円均一ショップで購入)

2 カメラマウントの改造、その1
 BORGのパーツである、ペンタックス用のカメラマウントを改造しますが、それほどハードルの高いものではありません。左の写真の赤い線で囲んだ枠の中をサンドペーパーで黒い塗装を落とすだけです。写真のように溝のある位置などに注意し、他の部分の塗装を落とさないように気をつけます。作業の時間は2時間程度でした。
3 カメラマウントの改造、その2
 作業後の写真です。塗装を落とすと金属の部分が剥き出しになります。

F-AFアダプターです。

F-AFアダプターとカメラマウントです。F-AFアダプタの接点の部分をショートさせることで、AFが動作します。
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接続面です。赤い矢印の部分が接触して接点がショートし、AFが動作します。
接眼部を拡大したもの
 左の写真は接眼部を拡大したものです。ヘリコイド接眼部、カメラ回転装置(製造中止品)、2インチホルダーS、カメラマウントホルダーM、カメラマウント、ペンタックス用F-AFアダプター、カメラボディー(ペンタックスK20D)の順番です。
※2インチホルダーSの中には、ケンコーのAC-CLOSE-UP LENS NO.3(52ミリサイズ)を望遠鏡の対物側からねじ込んでいます。
※改造が終了したら、カメラボディーの設定において、Cカスタムメニューの36.絞りリングの使用で「許可」を選択します。これを行わないとAFが作動しないようです。
7 撮影風景です。 8 接眼部の拡大です。

9 実際の使用方法
(1)右上の写真のヘリコイド接眼部の前にあるドロチューブ(接眼筒、正式名称は眼視ユニットN)を、カメラのファインダーを見ながら
ピントが大体合う位置まで引き出します。
(2)その状態で、ドロチューブについているネジを軽く締めてドロチューブを固定します。
(3)カメラ回転装置を用いて、ファインダを見ながらカメラを横位置、もしくは縦位置に回し、回転装置のネジを軽く固定します。
  (カメラ回転装置を使用しない場合は、(2)の段階でドロチューブを回してカメラを回転させます。)
(4)カメラのシャッターを半押しすると、ファインダーの中央部に見えている被写体にオートフォーカスします。合焦するのは中央部のみです。カメラ側のAFモードレバーはAF.Cに設定しておきます。
(5)シャッターを切ります。
※1 撮影モードは絞り優先ですが、絞りの値は変更できません。シャッタースピードが遅い場合はASA感度を変更します。
※2 撮影された画像を確認して、画像が暗い場合は露出補正を利用します。
※3 オートフォーカスのスピードは、普段使用しているキャノンのUSMと比較しても遅くはありません。ただし、念のため、数枚は撮影しておきピントの良いものを後で選択するようにします。
※4 F−AFアダプターの合焦範囲は限られています。ピントが合わない場合は、再度ドロチューブを前後にスライドして大まかなピントを合わせます。
※5 上記の手順は、オートフォーカスのカメラレンズに比べると複雑ですが、BORGの場合は、これでかなり撮影が楽になります。


左の2枚の写真はEOS40Dを取り付けたものです。こちらはマニュアルフォーカスでピントを合わせます。無振動で撮影するため、ライブビューモードにして、液晶画面を10倍に拡大してピントを合わせるため時間がかかります。
EOS40Dによる撮影風景 EOS40Dを取り付けた接眼部
解像度の比較
いつも撮影する場所で、同じような距離から同じような条件で撮影したペンタックスK20DとEOS40Dの比較写真です。オリジナルの画像を等倍で切り出し2分の1にリサイズしたものです。
 オリジナルの写真を見るとペンタックスK20Dの組み合わせの方が解像度が高いようです。原因がカメラボディー側なのか、あるいは間に入るリレーレンズにあるのか、これから実験する予定です。
 ただし、出力される画像に関しては、ペンタックスよりEOS40Dの方が私の好みです。どちらを主力で使用するか悩ましいところです。
BORG125ED+ケンコークローズアップレンズNo.3+F AFアダプター+ペンタックスK20D BORG125ED+1.4倍テレコンバーター+EOS40D(ライブビューによる撮影)

10 数日間使用してみた感想
組み合わせ BORG125ED+クローズアップレンズNo.3+F−AFアダプター+ペンタックスK20D(AF BORG) BORG125ED+1.4倍テレコンバーター+EOS40D
ピント合わせについて ドロチューブを繰り出し大まかにピント合わせ。シャッター半押しで合焦するため、シャッターチャンスを逃す確立が減った。
ドローチューブを繰り出し、カメラをライブビューモードへ。それを10倍に拡大し、ヘリコイドでピント合わせをするため、ピント合わせに時間がかかる。
フレーミングについて 三脚の雲台とカメラ回転装置を使用してフレーミングを行う。合焦が早いため、フレーミングに専念できる。 三脚の雲台とカメラ回転装置を使用してフレーミングを行う。フレーミングを慎重に行う必要がある。フレーミングの後に再度ピントを確認する。
トマリモノ カワセミの場合は定位している時間が比較的長いので楽。 カワセミの場合は定位している時間が比較的長いので、上記の方法でも対応できる。
トビモノ 照準器を使用し、あらかじめ狙いをつけておいて、ピントを大まかに出しておけば対応可能と見られる。ただし、まだ成功していない。連写は秒間3コマ。 置きピンをして偶然にフレーム内に入らない限り無理。ただし連写は秒間6.5コマと早い。
画像について ノーマルの設定で出力される画像は、正直好みではないため、いろいろ設定を変えて実験中。 背景のボケ具合、コントラスト、色の抜け具合等、十分満足できる。また、高感度でもノイズが少なく早いシャッターが切れる。
解像度について 同じ対物レンズを使用しているのに、解像度が高い。原因を調査中。一皮むけたような解像感。 あと一歩のところで、解像度が僅かに不足している感じがする。
今後の使い方 解像度の高い画質が要求される場合と、トビモノに使用する。 トマリモノを中心に使用する。どちらの組み合わせも万能ではく、今ある機材の性能を最大限に引き出すことが大切。